熱い魂をサックスに込め、世界一のジャズプレイヤーを目指す青年の物語『BLUE GIANT』。
音が聞こえてくるような描写と情熱あふれるストーリーで多くのファンを魅了してきたこの作品は、『SUPREME』『EXPLORER』などシリーズを重ね、アニメ映画化もされました。映画は興行収入10億円超のヒットを記録した一方で、「ひどい」「冷めた」といった否定的な意見も少なくありません。
なぜこれほど評価が分かれるのか？ 原作ファン、音楽経験者、そしてジャズに憧れる観客それぞれの視点から、その理由を深掘りします。
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『BLUE GIANT』シリーズの概要
『BLUE GIANT』は石塚真一によるジャズ漫画で、主人公・宮本大（みやもとだい）が世界一のジャズプレイヤーを目指す物語です。舞台と登場人物の変化を伴いながら、以下の4シリーズで展開されています。
 『BLUE GIANT』（全10巻） |
仙台から上京し、ジャズと出会った主人公・大が、仲間との出会いを通じて成長していく姿を描く。 |
 『BLUE GIANT SUPREME』（全11巻） |
舞台はヨーロッパへ。大が新天地で新たな仲間とバンドを組み、ジャズの頂点を目指す。 |
 『BLUE GIANT EXPLORER』（連載中） |
アメリカ編。ジャズの本場で己を磨きながら旅を続ける物語。 |
 『BLUE GIANT MOMENTUM』（連載準備中） |
今後の展開に期待が寄せられている最新シリーズ。 |
情熱、挫折、友情、音楽への献身が縦横無尽に描かれ、ジャズを知らない人でも胸を打たれる展開が人気を呼びました。
アニメ映画『BLUE GIANT』のヒットと賛否
2023年に公開されたアニメ映画『BLUE GIANT』は、劇場アニメとして異例の興行収入10億円超を記録。音楽監修には世界的ピアニストの上原ひろみが参加し、圧倒的な演奏シーンのリアリティが注目されました。
しかし、SNSやレビューサイトでは「期待して観たけど冷めた」「感動が薄い」「原作の方が断然良かった」といった声も目立ちます。評価が割れた理由には、いくつかの要因が挙げられます。
「ひどい」と感じる人がいる理由とは？
原作ファンとの温度差
原作では、ジャズというニッチな題材にもかかわらず、情熱的でリアルなセリフ、演奏の緊張感、セリフのないページ構成が読者を惹きつけていました。一方、映画では時間制約によりドラマの深掘りが不足し、原作の濃密な人間関係が希薄になったとの指摘があります。また、漫画では情熱や緊張感、温度感を個人個人が想像で感じることで一人一人の感動につながっていましたが、情熱的なシーンを映像と音声でリアルに表現されてしまうと、一人ひとりが描いていた感動と違った受け取り方になってしまい、冷めてしまったという評価につながってしまっていることと考えられます。
演奏シーンの映像表現
演奏シーンはCGと作画の融合によって臨場感を出そうとしたものの、一部の観客からは「動きがぎこちない」「音はすごいのに映像が追いついていない」との声も。音楽そのものは素晴らしいと評価されながら、ビジュアルとの一体感に欠けると感じた人もいます。
音楽やジャズへの温度差
ジャズに強い関心を持つ視聴者からは「描写が浅い」「演奏シーンのリアルさが足りない」といった声もあります。一方で、ジャズ初心者には「用語や展開がわかりづらい」「とっつきにくい」という壁も感じられました。音楽知識の有無が評価の分かれ目になったとも言えるでしょう。
音楽経験者と音楽ファンの評価
興味深いのは、実際に音楽をやっている人と、音楽に憧れる人とで評価が異なる点です。
音楽をやっている人からは、「練習描写がリアルで共感する」「音作りやバンドの雰囲気がよく再現されている」と好意的な意見がある一方、「実際の演奏現場はもっと複雑」「甘い部分が多い」とする厳しい批評も。
一方で、音楽に憧れる立場の視聴者からは「音楽の世界に入る勇気をもらった」「努力の物語に胸を打たれた」との感想が多く見られ、エンタメ作品としての完成度は高く評価されています。
それでも『BLUE GIANT』は唯一無二の作品
『BLUE GIANT』は、「音が聞こえてくる漫画」と称されるほど、表現力と熱量に満ちた作品です。アニメ映画に関しては賛否があるものの、音楽と向き合う真摯な姿勢、全力で夢を追いかける若者の姿は、多くの人の心を動かしています。
映画の限界はあるにせよ、それを補って余りある音楽の力がそこにはあるのです。
まとめ
『BLUE GIANT』のアニメ映画が「ひどい」と言われる背景には、原作の熱量とのギャップや映像演出の限界があるものの、それはあくまでも期待値の高さの裏返しでもあります。マンガもアニメも、ジャズを題材にこれほど本気で描かれた作品は他にありません。賛否両論が巻き起こるのは、それだけ多くの人の心を揺さぶった証拠ではないでしょうか。
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